第1章 朝日は終わりを告げた
「・・・!!」
いた。
陸橋の上から、こちらの様子を伺う人物。
大きなバイクに、ブロンズヘアー。
そして異様な空気をここまで漂わせる女性。
・・・ベルモットだ。
久しぶりにその姿を確認したが、相変わらず容姿に変わりがない。
その姿すら、お得意の変装ではないのかと思う程に。
慌ててスマホを取り出し、とりあえずあの人へと電話をかけることにした。
私が何か行動を指示されることはないかもしれないが、あの人自身が行動するかもしれないから。
安室さんが離れていることを確認すると、彼の上着で隠すようにしながら、そっと電話を掛けた。
「・・・ベルモットが、います」
またしても、あの人が電話に出るまでのコール音はほぼ無いに等しかった。
ただ私の言葉に、あの人からの反応は無くて。
数秒の間を作った後、その電話は呆気なく切られてしまった。
都合が悪かったのか、それとも声が出せない状況だったのか。
とりあえず伝えることはできたはずだとスマホをポケットにねじ込むと、安室さんのジャケットで更に頭を隠して。
ただ私が狙いだとすれば、1つ疑問が残る。
・・・何故、私を隠すようなことをバーボンがしたのか、だ。
ーーー
日本の警察が到着する頃、ベルモットの姿も気配もいつの間にか消えていて。
私達も一応、警察での事情聴取を受けてほしいと言われたが、毛利さんに頼み込んでどうにか解放してもらった。
流石にそこへ踏み込む訳にはいかない。
私の素性がバレることは・・・許されないから。
長い1日だった。
流石に早く帰って休みたい。
電話を切られたあの人からも、今日はもうバーボンから目を離しても構わないとメールを受け取った。
「ん・・・っ」
僅かに朝に近い空気を感じる中、疲れを絞り出すように体を伸ばして。
・・・そういえば車を置いたままだ。
でも今は運転する気力が無い。
明日に改め、今日は早く帰ろう。
一応来るだけは来た警察署を背にして、家路に着こうとした時だった。