第1章 朝日は終わりを告げた
「ひなたさんも、怪我はありませんか?」
「は、はい・・・」
怪我よりも、私を引き寄せたその手を早く退かしてほしい。
その方が気になる。
・・・また、体が動かなくなりそうで。
「何なのよ、あんたら!?」
犯人達が乗る車から降りてきた犯人が、そう叫びながら私達に叫んでいて。
その手には銃が握られ、銃口は人質らしく抱えられたコナンくんへと向けられていた。
・・・でも案外冷静でいられるのは、彼女には隙しかないからだろうな。
「!」
そんな事を脳裏で考えていた時、犯人とコナンくんが乗っていた車の上に、1台のバイクが乗り上げた。
このバイク・・・さっきまで私たちをつけてきていたバイクだ。
「吹っ飛べェ!!」
犯人がそのバイクの存在に気付いた瞬間、その車輪は勢いよく犯人の顔を蹴り上げた。
・・・流石にやり過ぎでは、と感じたのは私だけではないと思いたい。
「待ってください」
安室さんや毛利さん達が車から降りるのを見て、私も車外へと出ようとした瞬間、それは何故か安室さんによって止められた。
「!」
かと思うと、徐ろに彼は上着を脱いでそれを私の頭へと被せた。
「破片が落ちてきては危ないですから。それに、こっちはフロントガラスの破片も多いので、少しの間ジッとしていてください」
何人もの女性を落としてきたのだろうなと感じる笑顔を向けられながら、彼は再び私に指示を出して。
上着を掛ける必要まではないと思ったが、変に口出しをするのも気が引けて。
「ありがとうございます」
素直に従い笑顔で返せば、彼の笑顔は満足さが追加されたものになって。
「・・・・・・」
ここに居させたのは何か意味があるのではないだろうか。
そんな事さえ思ってしまう。
彼の行動全てが怪しく、私を試しているようにしか感じない。
そう目を伏せながら、それとなく車内を見回していた時だった。
「・・・ッ!」
背筋が凍るような感覚。
久しぶりに感じるその感覚は、間違えようもないもので。
慌てて車内から外へと視線を移動させると、辺りを見回し探した。
絶対にどこかにいるはずだと、確信を持って。