第12章 LikeはLoveか、別物か
「赤井さん・・・っ」
彼が何を狙撃したのかは分からないが、何故かそこに安心感を覚えた。
数十秒かけて冷静さを少し取り戻した私は、自分が車外に出ていることにようやく気が付き、先程までとは違う悪寒を感じた。
命令に背いてしまっている。
急いで車に戻らなければと、足を進めかけた時。
「!?」
誰かに腕を引かれ、倉庫裏の陰になる場所へと引きずり込まれるように体を持って行かれた。
ヤバいと思った時には、もう遅くて。
腕を払おうと手を引くが、ビクともせず。
最終手段か、と隠していた銃に手を伸ばしかけた時。
「待て」
「!」
聞き覚えのある声に、体は反射的に動きを止めた。
ゆっくりと顔を上げると、そこには私を見下ろす赤井さんの姿があって。
安堵と悪寒が一気に体を走ると、体はこうなるのかと思い知る中、赤井さんは静かにするよう人差し指を口元に当て、私を包み込むように頭を抱えながら抱きしめた。
息を殺しながら彼を見上げると、どこかに視線を向けながら様子を伺っている姿が目に映った。
ジンは?バーボンとキールは?
何を狙撃したのか?
聞きたいことは沢山あるが、今は荒ぶった心臓を静める事で精一杯だった。
「・・・飛び出してくるとは、君らしくないな」
「・・・!」
暫く経って、赤井さんから掛けられた言葉はそれだった。
ハッとしては再び彼を見上げると、少し残念そうな表情を私に向けていて。
「すみませ・・・っ」
期待なんてされていないと分かっているが、彼を失望させてしまったと、咄嗟に思った。
謝罪なんて何の意味も持たないが、そうする他何も思いつかなくて。
目を合わせるのがおこがましく感じ、サッと伏せた直後、彼は私の後頭部を抱える手の力を少し強めて。
「君をそうさせているのが安室君だと思うと、少し複雑なところだ」
そう言い残し、彼の車の方へと足を進めた。