第12章 LikeはLoveか、別物か
「いいから、ここにいるんだ」
少し強めの口調。
これは・・・命令だ。
「・・・ッ」
なるべく赤井さんの命令には背きたくないが。
この命令には納得できない。
・・・でも、今は赤井さん一人で動くのが賢明だ。
「・・・分かりました」
落ち着け、冷静になれ。
こんな状態だから彼は私を置いていくんだ、と自分に言い聞かせ、ゆっくりドアノブから手を離した。
それを確認した赤井さんはライフルを手にすると、すぐに戻るという言葉を残し、倉庫街へと姿を消していった。
「・・・・・・」
静かだ。
遮るものが少ないせいで、音がよく響いてくる。
そのせいか、自分の鼓動がやけに耳につく。
・・・うるさい。
こんなにも鼓動がうるさいのは、初めて赤井さんに狙撃を教わった時以来だ。
ただあの時の鼓動の音とは・・・随分と違う。
それにあの時は、1発狙撃をした瞬間の発砲音と共に・・・。
「!!」
懐かしい記憶を呼び起こしていると、その時の記憶とリンクするように、遠くから発砲音が聞こえた。
この音は・・・ライフルじゃない。
という事は、赤井さんが撃ったものではない。
それに気づいた瞬間、体は無意識に車外に出ていた。
「・・・ッ」
撃った・・・誰かが、何かを。
段々と呼吸が整わなくなり、脳が事実を事実として認識しにくくなっていた。
威嚇だった可能性もある。
そう冷静に考えようとしたが。
どうにも上手く考えることができない。
今自分が歩けているのか、それすらも分からない。
危険だと脳が体に訴えているのに、いう事を聞かない。
「!!」
パニックのような状態に陥っていると、もう1発の発砲音が微かに聞こえてきて。
今度は赤井さんのライフルからのものだとすぐに分かった。
サイレンサーが付いているが、だからこその特融の音が私には分かる。
その瞬間、ようやく体が目を覚ましたように体の自由が戻った。