第12章 LikeはLoveか、別物か
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「ひなた」
「!」
赤井さんが、耳元でそっと私の名前を呼んだ。
それは、目覚ましとしてはこの上ない程十分なもので。
思っていたよりも眠りは深いものになっていた事に寝起きの感覚で掴むと、勢いよく体を起こした。
「な、何時間寝てました・・・!?」
外が明るみを帯びている。
朝が来ているのは間違いが無くて。
聞くのは怖いが、謝罪は早い方が良い。
ベッドに腰かけ、私の様子を見守る赤井さんは小さく口角を上げると。
「ほんの8時間だ」
今度は青ざめるには十分過ぎる言葉を口にした。
確かに休めとは言われたが。
赤井さんを横に流石に寝すぎだと、視線を落として。
「・・・本当に、すみませ・・・んむっ」
こんな事で赤井さんは怒らないだろうが。
それでも罪悪感と失態感が大きく押し寄せて。
視線を伏せて謝罪を仕掛けた時、赤井さんの左手が私の両頬を掴むように力を入れられた。
「悪い癖だな」
謝り癖、とでも言うのだろうか。
誰にでもそうなる訳ではないが、この状況では謝って当然の事で。
「・・・・・・」
謝罪でなければ何と言うのが正解なのか。
模索する時間は一瞬だったが、脳内での考えは大きく巡って。
ただ、答えなんて出るわけも無くて。
「まあ、そこが良いところでもある」
フッと漏れた赤井さんの軽い笑いと共に私の頬から離れた左手は、そのまま彼の来ているジャケットのポケットへと伸ばされた。
そこから煙草を取り出すと徐ろに火がつけられ、一度大きく煙を吐き出すと、私に視線を向けないまま話を切り出した。
「・・・少しだが、状況が分かってきた」
「!」
知りたいような。
知りたくないような。
震えそうになる手をぎゅっと握り込むと、赤井さんの話に耳を傾けた。