第12章 LikeはLoveか、別物か
「・・・・・・」
指示通り、ベッドには入った。
けれど、すぐに眠気がくるかというとそうではない。
既に数十分経ったように思う。
緊張感や胸騒ぎで体が落ち着かず、目を瞑っても体が休まらない。
体の疼きを誤魔化すように体を丸めると、赤井さんの足音が近づいてくるのを感じた。
「心配事か?」
ギッと、ベッドが沈んで。
ゆっくり瞼を上げると、ベッドに腰かけ、こちらを見下ろす赤井さんの姿が目に映った。
「・・・どうなんでしょう」
本来なら、いいえと即座に返すのが正解で。
そんなもの、感じるだけ無駄で無用なことなのだが。
名前のない感情が、どうにも体を蝕んで。
元々FBIには相応しくないメンタルが、音を立てて崩れるのが自分でも分かったから。
思わず、本音が漏れた。
今更、赤井さん相手に本音が隠し通せるとも思っていなかったが。
「FBIに入りたいと息巻いていた頃からを考えると、随分弱気になったな」
それは、自分でもそう思う。
こういう事になるかもしれないことも分かっていた。
もっと危険なこともあったし、これからもあるかもしれない。
なのに。
今は別の不安な感情が、落ち着いてくれない。
「感じていればいい、そんなもの」
「・・・?」
乱しているのか、正しているのか。
前髪からかき上げるように私の頭を撫でると、赤井さんはそう言って。
「時期に、杞憂だったと気付くからな」
珍しく、フッと柔らかい笑みを見せた。
「・・・っ」
ほんのりと香る煙草の匂いが、どこか気持ちを軽くさせる。
本当にこの人は・・・不思議な人だ。
「分かったら早く休め」
「・・・はい」
数分前までは寝付ける様子なんて微塵も無かったのに。
今なら瞼を閉じただけで眠れそうなくらいには、体も気持ちも軽くなっていた。
意識が少し遠のく中、額に感じた温かさが何なのか。
それを知るのは少し先の事だった。