第1章 朝日は終わりを告げた
「・・・・・・」
その横を安室さんが通り抜けようとした時。
運転手の姿が一瞬だが目に映った。
ピンクアッシュに近い髪色で、眼鏡をかけた男性。
姿勢を低くし、通常とは反対側に開く車のドアから体を乗り出しているように見えた。
・・・ただ、両手をハンドルから離しているように見える。
では運転は誰が・・・。
「毛利先生、そのまま右側のシートベルトを締めていてください。それから、蘭さんとひなたさんはシートベルトを外して」
「は、外すんですか?」
安室さんは突然、淡々とそう指示を出すと、蘭さんは戸惑いつつもそれに従って。
私も、彼の指示通りにシートベルトを外した。
「蘭さんは毛利先生の方へ精一杯詰めて、毛利先生は蘭さんを引き寄せていてください」
・・・まさか。
「ひなたさんは、こちらへ」
まさか。
毛利さん達がいるのに、そこまで強行手段に出るとは思わなかった。
一応その後の彼の指示通り体を寄せたが、妙なざわつきで頭はいっぱいになった。
「!」
彼は肩をグッと引き寄せた後、私の頭を抱えるように手を回した。
・・・その数秒後。
大きな衝撃と共に、大きな塊がぶつかり合う音が響いた。
何が起こったのかは分かっていたけれど。
起こすはずがないと思っていた行動を起こされると、こうも動揺してしまうものなのか。
犯人達とコナンくんが乗る車を止める為に、安室さんは自身の車を使った。
助手席側の側面に犯人が乗る車を衝突させ、有無を言わさず止めさせた。
・・・似たような経験は何度かした事があるけれど、ここは日本だ。
まさかこの男がそんな事を、この国でするなんて。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ・・・」
安室さんは、冷静に後部座席の毛利さんと蘭さんに声を掛けた。
どうやら彼らに怪我は無いようだけど。
こんな無茶なやり方をするような人だっただろうか。