第11章 昨日と明日と明後日と
爆風が車体を揺らし、衝撃波が体を襲う。
その反射で瞼を閉じてしまっていたが、次に瞼を開いた時、一瞬その光景を疑った。
橋の一部が、爆風で吹き飛ばされている。
辺りは火の粉と煙に包まれ、車内は一気に温度が増した。
「赤井さん・・・っ」
そこにいては危険だ、と外に出て車内に戻るよう促そうとした時、彼はボンネットを数回手の甲で叩いて何かを合図した。
何の合図なのかを考え動きを止めていると、赤井さんは車の前方へと少し歩みを進めて。
「!」
それを目で追った時、視界に入ってきたのは白いスポーツカー、透さんの車だった。
それに気づくと、赤井さんが私に姿を隠すように指示したことがようやく分かって。
後部座席で潜るように身を潜めた。
「・・・・・・」
彼は赤井さんの車の少し前に停車すると、起きた状況を目視で確認する為か損傷した橋の近くまで駆け寄ってきて。
そして赤井さんのライフルに視線を落とすと、その表情を歪めた。
・・・いつもの安室透の顔ではない。
どちらかというと、バーボンに近いが・・・。
普段は見慣れないスーツを身に着けているせいか、やはり公安としての顔なのだろう。
・・・私の知らない、彼だ。
「!」
遠くから、パトカーのサイレンが聞こえる。
その音を聞いた透さんは赤井さんに視線を残しながら、静かにその場を去って。
我々FBIも、日本の警察に見つかると面倒だ。
赤井さんがその場で電話しているのを横目で確認しながら、透さんの車が走っていくのを見届けた。
「・・・戻るぞ」
「はい」
ジェイムズさんに報告が終わったのだろう。
私たちだけで、後始末はできないから。
赤井さんは車に乗り込むとすぐに車を出発させ、その場を後にした。
———
「それで?侵入者は組織の工作員だと思っていいのかしら」
「恐らくな」
その後、工藤邸で作戦会議が行われた。
元々私を連れていくと、一部の捜査員には知らされていなかったせいか、所々から刺されるような視線を感じて。