第11章 昨日と明日と明後日と
ライフルバッグからライフルを取り出し、スコープを覗きながら赤井さんは小さく、フッと笑いを漏らして。
「来るさ、必ずな」
「・・・!」
このブレない自信。
圧倒的な実力。
やっぱり・・・格好良い。
この人についていきたいという気持ちは、私もブレはしないと思うが。
「ひなたは中にいろ」
実力はまだまだ伴わない事実に、小さく拳を握った。
「・・・はい」
この状況では、いずれにせよできることはないのだが。
そうでなくても役に立てることが少なく、不甲斐なさばかりが目立って。
早く・・・彼の傍に立っても、彼が恥ずかしくない存在でありたいと思うが。
気持ちと実力はいつもバラバラだった。
「!」
赤井さんが車体を土台にライフルを構え照準を定めていると、追跡していた車は本当に逆走をして戻ってきた。
まだ先だが、それなりのスピードは出ている。
それどころか、それは増しているようにも見えて。
・・・まさか、突っ込んでくる気か。
「・・・ッ・・・」
大丈夫だと頭では分かっているが、現状がどこか不安を掻き立てる。
向かい合う車はどんどんと近づいてくる中、ようやく赤井さんが引き金を引いた。
途端、相手の車は大きくスピンし、橋への衝突を繰り返しながら背後にあったタンクローリーへと衝突した。
「!」
暫くして、橋に大きな揺れが起きた。
下げていた頭を起こし状況を確認すると、車はタンクローリーごと橋の下の海へと落ちようとしていて。
・・・車から、人が出てきた様子はない。
ということは、追跡していた人物はまだあの車内に。
そう思う間にも、タンクローリーはゆっくりと、確実に傾き始めて。
数秒後には海へと到達し、ガソリンを運んでいたであろうタンクローリーは大きな爆発を起こした。