第11章 昨日と明日と明後日と
「・・・ひなた、なるべく頭を下げろ」
体に掛かる重力が更に強くなる中、赤井さんは再びそう指示をして。
理解が追い付かないまま従うと、衝撃はすぐに訪れた。
「きゃ・・・ッ!?」
重力などではない。
今度は車体がぶつかり合う衝撃が、体を襲って。
思わず情けない声を上げてしまった上、車内で体を打ち付けた。
どちらが先にぶつけたのか。
それはこの際どちらでもいい。
彼が・・・透さんが、この追跡に一歩も引いていない事実に震えが走るようだった。
「大丈夫か」
「はい・・・っ」
そう返事をしたのも束の間。
今度は前方から大きな衝撃音が響き渡って。
「あ、赤井さ・・・」
追跡している車が、1台の無関係な車を走行するトラックとで挟み、大きく跳ね上げさせた。
その車体は赤井さんと透さんの車目掛けて落ちてきたが、上手くそれを避け、互いの車の間に落下して。
「・・・ッ」
落ちた先でタンクローリーと衝突していたが、各々の車内からは人が脱出している様子が見えた為、どうやら乗っていた人々は無事なようだ。
「・・・ひなた」
「はい」
赤井さんもそれを静かに確認し、追跡を続けた。・・・と、思ったが。
「!」
透さんの車は先を走り抜けていく中、赤井さんは何故か橋の上で車を急停止させた。
「準備を」
彼の言う準備。
それは勿論、狙撃の準備だ。
「こ、ここで良いんですか?」
「ああ、待ち伏せる」
戸惑いや疑問はある。
けれど、指示された通りに体は自然と動き、彼のライフルバッグを後部座席から外へと持ち出した。
その間際、車内のカーナビに表示された道路交通情報が目に飛び込んだ。
それを見て少しだが、赤井さんが何を考えているのかは分かったが・・・。
「・・・来るでしょうか」
ライフルバッグを外で彼に手渡しながら、そう尋ねた。
この先はかなりの渋滞だ。
いくら無茶な運転をしている者でも、突破するのは難しいだろう。
だから赤井さんは、追跡している車がここまで戻ってくると読んだ。