第11章 昨日と明日と明後日と

「っ･･･」

･･･想像と違う。
その事実が酷く恥ずかしかった。

どこか･･･額ではない場所へのそれを、期待していたようで。

「ここに、されると思いました？」
「！」

尋ねながら彼は、指でそっと私の唇を撫でた。
同時に、瞼もパッと持ち上がって。

どこか挑発的にも見える笑みを私に向ける彼の顔が、目に飛び込んできた。

「･･･大丈夫、しませんよ」

何が･･･大丈夫なのだろう。
いや、合っているのか。

何が何だか分からなくなって。

彼から顔を背けたいのに、それを彼の手が許さなくて。

顔の熱さだけが増していった。

「きちんとひなたさんの口から、僕への気持ちを聞くまでは」
「･･････」

･･･本当に好きな人としかしない。
彼は律儀に、私のその言葉を守っているのか。

「･･･ひなたさん」

自覚はしたが、自身がない。

「好きですよ」

彼が言うその言葉と、私の感情は相違がないのか。

一種の吊り橋効果の様なもので、私が勘違いしているだけなのではないだろうかと。

･･･そう、思ってしまうが。

「ひなたさんが僕のことを見ていない時から、ずっと」
「･･･ッ」

透さんの言葉一つ一つが、この感情が偽りでないことを証明していく。

きっと、もうとっくに。

私は･･･彼のことが･･･。

「わ･･･」


好きだ。


･･･多分、間違いはない。

けど、これは。

「･･･ひなたさん？」

口にして、良いことなのだろうか。
そんな迷いが、言葉を詰まらせた。

「･･･っ」

言ったところで。
彼と両想いになったところで。

これは報われるものなのか？

彼は日本の警察、それも公安で。
私は国すら違う、彼の嫌うFBIで。

･･･思いを告げたところで、どうなるというのだろう。