• テキストサイズ

【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第11章 昨日と明日と明後日と




「怖くなって、2階からでしたが飛び降りて逃げました。死んだらそれで構わないと・・・思いながら」

幸い、植木がクッションになり、大したけがもなく落ちることができた。

ただ、田舎で夜は人通りが少ない場所だったこともあり、男たちは私を執拗に追いかけた。

「服は逃げる時に掴まれたので脱いでしまい、下着姿のままでしたが逃げていると、通りがかった人が助けてくれました」

捕まれては逃げ、上がった息の中、必死に叫んで。

「父や、知らない男たちはそのまま捕まりましたが、あの時の感覚は・・・今でも消えません」

その偶然通りがかった人も男性だったが、この人は大丈夫だと、本能が見極めた。

後に彼が赤井秀一という人だと知り、その背中を追いかけてFBIに入ったのだが。

「・・・もう、何年も経ったのに。怖くて・・・たまらないんです」

この事をもちろん知っている赤井さんは、私がFBIに入ることを本気で拒んだ。

入れば、これだけの事では済まないこともある、と。

それでも私は彼の傍にいたかった。
役に立ちたかった。

恩を返したいなんて意味ではなく、単純に彼の右腕としていたかった。

「だから、透さんのせいじゃ・・・」

恐怖もあるけれど、それ以上に。
・・・不甲斐なさ。

そんな感情に涙が押し出されただけだと話すと、ずっと黙って話を聞いていた透さんは、静かに口を開いた。

「・・・すみません」

そしてなぜか、また謝罪の言葉を口にした。

「・・・どうして、透さんが謝るんですか」

彼が謝ることなんて、一つもない。

「・・・怖かったですよね」

それでも彼は、起きたことを自分の事のように感じてくれて。

「嫌だったら、突き放してください」
「・・・っ」

そう僅かに震えた声で前置きし、今までになくゆっくりとした動きで、私を優しく抱きしめた。


 
/ 368ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp