第11章 昨日と明日と明後日と
「許可を取ったところで、強行突破に出ないとは限らないのに」
悔やんで・・・いる。
彼が、過去の行いに。
「・・・僕に向き合って下さり、ありがとうございます」
挙句、弱く何もできなかった私に、感謝の言葉まで口にして。
「僕を信じてくれて、ありがとうございます」
強く、でも優しく、私を抱きしめた。
「・・・怖い思いをさせてしまい、すみません」
その温かさが、苦しくて。
私には相応しいものではない、と卑下したが。
「話してくれて、ありがとうございます」
彼の言葉が、肯定感を上げていく。
抱きしめられる度、何かが押し上げられていく。
「・・・っ」
目から零れ落ちる何かはそのせいだと、意味もなく言い聞かせて。
彼の背中に手を回し、服を掴んでは縋りつくように静かに泣いた。
ー
「大丈夫ですか」
「・・・はい、すみません・・・」
数十分、彼は私が落ち着くまで静かに頭を撫でて待ってくれた。
ようやく体も心も冷静になった頃を見計らい、ベッドに座るよう運ばれると、彼は冷たいタオルを作って目に当てるよう言ってくれた。
「腫れないといいのですが」
数分後、反対に温かいタオルを作って戻ってきた彼は、私が目に当てていたタオルと取り換えた。
・・・相変わらず、こういう気配りには長けている。
その優秀さは時に私を苦しめたものだったが、今は単純に羨ましく思う。
「!」
温かいタオルも冷えが目立ってきた頃、それをそっと目元から外すと、彼の指が頬を滑って。
「あ、すみません・・・つい」
驚いて彼に視線を向けると、パッと手を引きながらそう言った。
そう、だな。
何かに落ち込んでいる女性には、その手段は有効だろう。
男性に触れられたことで悩んでいる人以外には。
彼もそれに触れた後で気が付いたから、手を引いたのだろう。