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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第11章 昨日と明日と明後日と




「部屋に戻ります。僕がいては、ひなたさんも落ち着かないでしょうし」
「ま・・・ッ」

違う。
彼のせいではない。

それだけは、誤解されたくない。

「今日はお休みですよね?」
「まって・・・」

私のくだらない過去のせいだと。

「ゆっくり休んでください」
「透さん・・・っ」

ちゃんと。

「聞いて・・・!」

・・・説明しておきたい。

「・・・・・・」

突然私が声を荒げたせいか、彼はほんの僅かに目を丸くしながら私を見て。

呼吸が整わない中で無理に声を発したせいか、激しい運動もしていないのに、肩で息をするほど上がっていた。

グッと彼の服を掴み、一度目を見て。
数秒経って、結局何かに耐えられなくなって。

彼の体に顔を埋めながら、震える唇を必死に動かした。

「・・・昔、男の人に襲われたことがあるんです」

・・・消えない、過去。
もう、十数年も前の出来事なのに。

「相手は・・・父でした」

汚らわしい、私を何年も縛り付ける記憶と感覚。

「といっても、血のつながりは無い・・・母の再婚相手でしたが」

あの時の母の溜め息、父の荒げた呼吸。
母の冷たい眼差しと、父の私を女としてみる目。

「最初は家の中で軽く触れてくる程度だったんですが・・・その内、所かまわず触れてくるようになりました」

そして母は、再婚相手の父が私にそういう目を向けた怒りを、父ではなく私に向けて、腹を立て見捨てた。

一人で家を出る勇気も術もない。

・・・私は、孤独なのだと悟った。

「ある日の夜、私が寝ている部屋へ、父が忍び込んできました」

その時の父は、下着以外の衣服を身に着けていなかった。
毎日浅い眠りで過ごしていたせいか、床が軋む音が私を起こしたけど。

「すぐに逃げましたが・・・その日は父だけではなかったんです」

ドアを開けた瞬間、おぞましい光景が目に飛び込んだ。

「・・・男が数人いて、カメラや道具を持っている人もいました」

父は・・・性欲を持て余した男たちに声を掛け、私を玩具として扱おうとしていた。

見たこともない器具や大人のそれに震えが走り、涙があふれ出てきた。

その時の体が一瞬で冷えていく感覚は、一生消えないだろう。



 
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