第11章 昨日と明日と明後日と
「・・・ひなたさんって、簡単に男を家にあげるんですね」
彼が言うのか、という言葉は飲み込んで。
まあ、昴さんがああいうことをすれば、多少疚しさというのは生まれてきてしまう。
「だ、誰でもじゃありませんよ・・・」
「では、どういう人をあげるんですか?」
どういう・・・か。
そもそもこの部屋には赤井さんと目の前の彼しか入れたことはないが。
「・・・・・・」
こういう場合、なんと言うのが正解なのか。
好きな人しか、気のある人にしか・・・なんて言えば、多少それらしくは聞こえても、結局は昴さんのこともそう言っていることになる。
「それ、は・・・」
当たり障りのなく、彼の気分を害さない好感の持てる言葉。
バーボンであれば、簡単に出てくるのだろうけど。
今の私の語彙力では、どうすることもできなかった。
「!」
彼の言葉に反論できないままでいると、ふと体に違和感を覚えた。
僅かに乱れの残る服の裾から、別の人間の熱を感じた。
「・・・っ!」
咄嗟に、服の裾から肌をゆっくりと撫で上げてくる彼の手を掴んだ。
「男は獣なんですよ」
掴んだところで、さっきの昴さん同様どうすることもできないのだけど。
抵抗しない訳にもいかず、
ただ必死にそれ以上触れる面積が増えないよう、抑えつけた。
「許可を取らなくても、こういうことができてしまいます」
・・・知っている、そんな事。
昔、嫌と言う程味わった。
それでもこういうことにも関わる世界に、再び踏み込んだ。
それは赤井さんがいたからで。
彼がいればこれくらいのことも、乗り越えられると思っていたのに。
「・・・っ」
結局は、過去のどうしようもない出来事を・・・今でもまだ、引きずっている。
まだこうして男性の強い力を感じれば、赤井さん以外の男性には震えが止まらない。
呼吸もおかしくなり、平常でいられなくなる。
・・・知らない内に目に涙が溜まっていくのを、堪えるしかできなくなる。