第11章 昨日と明日と明後日と
・・・けど。
「す、昴さん・・・!」
やはりその作戦の意図を理解せずに、このまま事が進むのは抵抗があって。
読み取れない私が悪いのだということは分かっているが、せめて僅かな説明だけでも欲しいと目で訴えてみたけれど。
「ああ、その顔。大変そそられますよ」
「っ・・・」
彼の手が、服の隙間から鎖骨辺りを撫でるように忍び込んできて。
自分がどんな表情をしていたのかなんて確認はできないが、恐らく昴さんが言うような、言葉通りの表情ではないはずだ。
ただ余裕のない、FBIらしからぬ表情をしていたことだけは確かだろう。
「昴さ・・・っ」
彼の名前を呼んで、静止を求めるしかできない。
こういう時、流れに身を任せれば良いのだろうか。
でも、何となくだけど。
昴さんはそれを求めていないように思えて。
わざと、私が静止させるように仕向けていたように感じた。
それに従っていたわけではないが、更に彼の手が奥へと進みそうになり、流石に手の力を強めたとほぼ同時だった。
「!」
玄関のドアが、数回ノックされた。
数分前と同じように視線を玄関に移すと、そこには先程までは無かった人の気配を感じとった。
「すみません、安室です」
玄関の向こう側から、そう呼びかけられたが。
最初からそんなことは分かっている。
音が響いてきた位置、ノックの感覚、それだけで彼だと分かるほど、いつも通りのそれだったから。
「ひなたさん、いますよね?」
「・・・・・・」
私がいることは、物音で確認済みのようだ。
・・・もしかすると、確認したのは物音だけではないのかもしれないが。
だからこそ玄関のドアを開くのが怖くなって。
どちらがそのドアを開くのかと、昴さんにアイコンタクトで尋ねてみたが。
「構いませんよ?出て頂いて」
「・・・・・・」
どうやら、最初から私が対応することは決まっていたようで。
いや、恐らくここまで・・・もしかすると、この先までも。
彼の思い通りなのかもしれない。