第11章 昨日と明日と明後日と
「危険な状態だからな」
危険な状態・・・赤井さんがそこまで言うということは、総動員で動いているのだろうか。
「ひなたも、安室君も」
「?」
私?それに、透さんも?
そもそも、危険なのは私たちに対するものだったのかと混乱を増やしていると。
「奴らは近々警察庁に潜り込むようだ」
「警察庁・・・?」
組織が、警察庁に。
何故そんなことをする必要があるのか。
彼らだって、警察と関わり合いを持ちたくないはずで、増してや相手の巣に飛び込むなんてこと以ての外・・・。
「ノックリストを手に入れるためだろう」
「!」
・・・そうか。
理由は確かにあった。
ノックリスト・・・つまり、スパイとして潜り込んでいる人間を一気に炙り出そうというのか。
「キールも同じく危ない。だとすれば協力者として、動かない訳にはいかないだろう」
「・・・・・・」
キールもCIAの諜報員だ。
彼女の情報も乗っているだろう。
勿論、そこには私や安室透のことも・・・。
「ひなたは死を偽装して組織から抜けている。FBIだとバレれば、そのこともバレる可能性がある」
・・・そう、私は赤井さんと同じように、今は死んだ人間だ。
赤井さんに殺されかけたと見せかけて、組織を抜けた。
如月ひなたは偽名ではない。
これまでがずっと、偽名だった。
これらがバレる事のデメリットが如何に大きいか、今ではまだ計り知れない。
「だから暫くは俺についてろ」
真っ直ぐな瞳で私にそう命令する彼の表情は、真剣以外の何物でもなくて。
赤井さんに言われれば、従うだけではあるのだけど。
「お邪魔に・・・なりませんか」
赤井さんだって、バレれば危険なのに。
私を傍に置くメリットが小さく感じてしまって。