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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第10章 ジャズに乗せて踊ろう




「では、文句なしということで」
「!」

言い終わるとほぼ同時。
不意打ちと言えばそうだが、僅かでも油断したこちらが悪い。

「っ・・・」

かろうじてガードはしたが、彼の拳は真っ直ぐに私へと飛んできて。

・・・やはり手加減はほぼない。
昔、彼に手合わせをお願いしていた時に近い動きだった。

「・・・っ、く・・・」

昴さんの姿で何度か殴りにかかられたことがあるが、随分と手柔らかにされていたようだ。

それを痛いほど肌で感じる動きをしていた。

強さも、スピードも、あの頃のまま。
それどころか、こちらの想像をいつも上回ってくる。

ただ彼の癖も、同じように知っているつもりで。

「・・・」

ここで踏み込んだということは、次は聞き手の左手で殴り込んでくるはずだ。

そう予想立てて、いち早く避けたつもりだったのに。

「!?」

後ろに下がられた。
これではこちらの態勢を整える前に・・・。

「遅いと言ったはずです」
「うっ・・・!!」

・・・案の定、彼に吹き飛ばされるように殴られ、地面へと無様に転がった。

体中を打ち付けながら転がったダメージは、痺れのようなものも同時に走る衝撃だった。

「貴女が負けを認めるまで、手加減しませんよ」
「・・・」

・・・赤井さんに言われているはずなのに。
昴さんの顔で言われると、僅かな苛立ちが生まれる。

それも彼の作戦なのだろうが、逆にこちらにメリットもあって。

「されたら逆に怒ります」

・・・赤井さん以上に、遠慮なく殴れる。

ーーー

「は、あ・・・はぁ・・・ッ」

意気込んだのも束の間。
久しぶりの真剣な手合わせにしては、粘った方だと思うが。

「・・・負けました」

完敗だった。
あれから恐らく3時間は、手合わせをしたと思う。

けれど、彼に拳が届いた数より、殴られた数の方が何倍も多かった。

「よくやった方だと思いますよ?」

かろうじて届いた一発の中に、彼の顔を掠ったものがあった。
その傷から流血はせず、何かが破れた痕が残るのみで。

化けの皮だと分かっているが、どこか薄気味悪さのようなものを感じた。



 
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