第10章 ジャズに乗せて踊ろう
「何故だ?」
「か、彼は組織の人間ですよ・・・」
そう、組織の人間だ。
例え、だ。
例えバーボンの気持ちが真実だったとして。
私たちでは、どんな関係にもならない。
追うものと、追われるものなのだから。
それ以上の関係になんて・・・。
「まだ気が付かないのか」
「?」
赤井さんに手招きされ、僅かに首を傾けながら近づくと、彼が腰掛ける無造作に積まれた鉄筋の隣に座るよう、促された。
「彼の昔のあだ名は何だった?」
私が腰かけたのを確認すると、赤井さんは徐ろに尋ねてきて。
何故今そんなことを聞いてくるのか疑問を抱きつつも、以前言われた彼のあだ名を思い出した。
「・・・ゼロ」
コナン君から聞いた、バーボンの昔のあだ名。
組織にいた頃、恐らくスコッチが彼のことをそう呼んでいたのではないかと、コナン君から話を聞いた時に遠い記憶を蘇らせてはいたが。
その後は表立って動けないせいで、FBIの仲間に任せきりになってしまっていた。
「何か・・・あるんですか?」
「スコッチがバーボンのことを、裏でそう呼んでいたことは思い出しているんだろう?」
赤井さんも、あの頃はライとして一緒に行動することもあったから。
私たちの前では勿論コードネームで呼び合っていたが、そう聞いたことはあると小さく頷くと、赤井さんは次の煙草へと火をつけた。
「彼らは、仲間だ」
「!」
一瞬は過っていた。
その可能性が、0でないと。
「う、裏は取ったんですか・・・」
「FBIをなめてもらっては困るな」
どうやって、なんて今更なことは聞かないし、なめてもいないが。
で、あれば。
認めたくないことがいくつも出てくる。
「で、も・・・だったら尚更・・・どうして・・・」
「その答えは、自分で出してみろ」
私に近づいてくる理由は、一体何なのか。
赤井さんはその真意にも気づいていそうだが、仮説すら教えてくれそうな雰囲気ではない。
そもそもそこまで教えてもらおうとしている自分の甘さに、眉間のシワが深くなった。