第9章 愛はお金で買えますか
「何!?赤井が拳銃を発砲!?」
「・・・!?」
電話に出たバーボンは数秒後に、突然そう叫んで。
発砲…赤井さんが?
でも、彼は私のすぐ傍にいるのでは。
咄嗟にバーボンへ向けていた視線は、ゆっくりと昴さんへと向けられて。
「何でもいい!動ける車があるのなら奴を終え!今逃したら、今度はどこに雲隠れするか…っ」
どういう、こと。
彼は、沖矢昴で…赤井秀一でもあったのでは。
そんな動揺が表ではありつつも、心のどこかで、安堵と納得を感じていた。
「少々静かにしてもらえますか?今、この家の家主が、大変な賞を受賞して、スピーチをするところなんですから…」
少なからず焦る様子を見せるバーボンの背中に向かって、小さい咳ばらいをゴホン、と一つしては、彼は流すような視線でテレビに注意を向けた。
「まあ、会ったことは、ありませんけどね」
ほんの数秒、バーボンもテレビに視線を向けたが、電話の先で起きている出来事の方が、彼の意識を引っ張って。
「赤井?」
「!」
それは、私も同じだった。
赤井さんが…電話の先にいる。
何より気になったのは、赤井さんがいる場所で。
バーボンは、仲間の命が関わればと前置きをしていた。
ということは、ジョディ達が狙われいたということだ。
恐らく電話は、そのジョディ達を狙っていた人物からの電話で。
…だとすれば。
単純な話だと、赤井さんは…ジョディ達の所にいて。
私と…ジェィムズさんしか知らなかった、赤井さんが生きているということが。
彼らにも伝わったということで。
「おい、赤井がそこにいるのか!?おい!」
それは、恐らく喜ばしいことなのに。
喜べない自分に、嫌気が差す。
如何に自分が、赤井さんが生きているという情報に酔っていたか、痛いほど思い知った。
何かができたわけでも、ないくせに。