第9章 愛はお金で買えますか
「と、透さん・・・」
「はい」
考えたくない。
答えを、出したくない。
「何を、言ってるんですか・・・」
恐らく私の出した答えは、バーボンが出そうとしている答えで。
「・・・分かっていなかったのですか?」
知りたくない。
昴さんも、明るみには出したくない事実なはずで。
「彼が、化けの皮を被っていると」
自分でもどこかで気付いていたけれど。
考えないようにしていたのに。
いざ突き付けられると、色んな感情で押しつぶされそうになった。
「君がそれを望むのなら、仕方ない」
「!」
・・・こういう時、私はどうすれば良いのだろう。
どうにかする為に、ここにいるのではないだろうか。
なのに・・・なのに、また。
「ッ・・・」
また、何もできないのか。
こうして、昴さんをジッと見つめる以外・・・できないのか。
こうしている間にも、昴さんの手は顔の方へと伸びていって。
何もできないことに絶望に近い感情を覚え、直視などできるはずもなく。
彼らと現実から、目を逸らした時には・・・既に事が終わっていた。
「・・・何のつもりだ?」
その結果は、私の予想とは反するもので。
バーボンの昴さんに対する問い掛けに、何事かと視線を上げれば、そこにはマスクを片手に、ゴホゴホと軽い咳をする昴さんの姿があって。
「少々風邪気味なので、マスクをしてもいいですか?君にも、彼女にもうつすといけない」
「・・・そのマスクじゃない。その変装を解けといっているんだ!赤井秀一!!」
・・・てっきり、私はバーボンの希望通り、その変装を剥いだのだと思った。
まさか相手を煽るように、言葉通りの行動を取るとは思わなかったから。
「変装?赤井秀一?さっきから一体何の話です?」
とぼけている?
いや、そうでなければ何だというのか。
私が何もできなかったから、彼はそうするしかなかったのだと思い込むようにしたが。
確信が、できなかった。