第9章 愛はお金で買えますか
「だが、この計画を企てたのは、別の人物。そう、別の人物」
別の人物・・・。
水無怜奈という協力者がいることは知っていたが、作戦を考えたのは赤井さんだと思っていた。
実際、ジェイムズさんは何も聞かされていないまま、赤井さんは単独で作戦に臨もうとしていた。
「その証拠に、その男は撃たれた刹那に、こう呟いている」
・・・來葉峠で水無怜奈に撃たれた時のことか。
離れた場所で見ていたジンが、最後は頭に撃てと言うと予想していた為、赤井さんは事なきを得たが。
その時の最後の言葉、は。
『まさか・・・ここまでとはな・・・』
バーボンが口にした言葉と、私の脳内での言葉が、リンクして。
私は音しか拾わせてもらえなかったが、それでも鮮明に脳裏に焼き付いている。
演技と分かっていても、恐怖で手が震えたのを今でも覚えている。
バーボンがあの時の様子を見ていたとは考えにくい為、録画でもしていたものを見たのだろう。
つくづく、趣味が悪い連中だ。
「私には、自分の不運を嘆いているようにしか聞こえませんが」
・・・私もだ。
昴さんの言葉に心の中で頷いた。
「ええ、当たり前にとらえるとね。だが、これにある言葉を加えると、その意味は一変する」
ある言葉・・・?
赤井さんの、言葉に?
何故バーボンにそんな事が分かるのかと、嫉妬に近い感情すら覚えた。
・・・ただ。
「まさかここまで・・・」
彼の自信に満ち溢れた目と、言葉が。
「読んでいたとはな」
私を、一瞬で納得させた。
「そう、この計画を企てた、ある少年を賞賛する言葉だったというわけですよ」
・・・信じ難いが、腑に落ちた。
何故私がポアロで働き、江戸川コナンの監視を命じたのか。
昴さんと共にバーボンのことを探らせたのは、今は上手く考えが纏まらないが、何となく・・・理解した。
私が、赤井さんが望んでいた役割を果たせなかったことも含めて。