第9章 愛はお金で買えますか
「その撃たれたフリをした男、その後どうやってその場から立ち去ったんですか?」
・・・昴さんも恐らく、把握はしているはずだ。
私はその作戦の直前、ジェイムズさんと共に作戦を知ってしまい、赤井さんの生存を知る数少ない人間となった。
「それを答える前に、テレビを消してくれませんか?大事な話をしているんですから」
そういえば、テレビがつきっぱなしだ。
私は彼らの会話で、気にも止めなかったが。
「いいじゃないですか。気になるんですよ、マカデミー賞。それで、その男はどうやって?」
そこまで家主を気にする人だっただろうか、と横目で彼の顔に目を向けて。
マスク姿を見慣れていないせいか、やはりいつもとは違う雰囲気が漂っていた。
「・・・・・・」
僅かに不服そうな表情を見せたバーボンだったが、すぐに彼は話の続きを始めた。
赤井さんを撃ったのは組織の人間だったが、その人は協力者だったこと、いつも被っているニット帽に血糊が仕込んでいたこと。
行動や作戦は全て、組織の行動を予想してたてられものだということ。
それらを雄弁に語るバーボンは、終始勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「中々やるじゃないですか、その男。まるでスパイ小説の主人公のようだ」
他人事ではあるが、ここまで知らない顔をできるのも潔いな、と関心すらしていたが。
そもそも何故、バーボンはその話を昴さんにしている・・・?
彼が赤井さんと繋がりがあると察したから、脅しに来たのか。
そして、私にも包み隠さず話しているということは・・・。
もう、私をただのポアロの店員としては見ていない。
あの頃一緒にいた、ウェルシュだと・・・言われているも同然だった。