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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第9章 愛はお金で買えますか




「と、透さん・・・」

バーボンとして、彼が。

「・・・こんばんは、ひなたさん」

穏やかに、いつもの笑顔で私に挨拶をする彼は、あまりにも普段と変わらなさ過ぎる。

まるで私がここにいる事を知っていたように、全く驚きの表情を見せなかった。

「ど・・・」

どうして、なんて。
また無意味なことを聞きそうになってしまった。

今は思考回路が崩壊寸前で、考えがそのまま口に出てしまいそうになっていた。

「僕はお茶を準備してきますので、どうぞ掛けていてください」
「!」

知ってか知らずか、そんな私を部屋に置いて、昴さんはバーボンと2人きりにさせた。

「お構いなく」

キッチンへと向かう彼に向かって、バーボンはそう言って。

私も手伝いを理由に部屋を出れば良かったが、体が動かなかった。

「・・・・・・」

気まずい、何てものではない。
最後の別れ際もそうだが、こんな所で会ってしまっているのだから。

昴さんとコナンくんの頼まれ事だとしても、これはFBIにとってどうなのだろう。

良くは・・・ないのではないだろうか。

「ひなたさん」
「っ!」

いつの間にか地面に落ちていた視線は、落ち着きなく泳いでいたと思う。

それを彼は一瞬で、自身に向けた。

「・・・っ」

・・・何を言われるだろう。
そんな不安が全面に出た、怯えた表情をしてしまっていると思う。

情けなくも。

「昨日は、すみませんでした」

けれど彼はその不安を拭うように、謝罪の言葉を口にした。

謝るべきなのは私の方なのに。

「体調が優れないとマスターから聞きましたが・・・その後どうですか?」

・・・そういえば、今日はそういう事にしていた。
そんな事にすら、気が回らなくなっていて。

「だ、大丈夫です・・・」
「そうですか、良かったです」

バーボンからは和やかな声と雰囲気が溢れているのに。
何故か、ギリギリと首を絞められているような感覚に陥った。




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