第9章 愛はお金で買えますか
そう伝えようとした時。
「!」
部屋に、来客を告げるインターホンの音が、私たちの耳に届いた。
一度離れた視線を彼に戻し、目が合った瞬間、いつもの笑顔を向けられて。
それにどれ程の安心感を覚えたか分からない。
きっと私は、この余裕そうな笑みに憧れを抱き、求めてきたのだと思った。
自分も、そうでありたい、と。
・・・あくまでも、その余裕そうな態度にのみ、だけど。
「すみません、客人を呼んできて頂けますか?」
私が?と小首を傾げたが、先程の彼の笑みといい、態度といい、誰が来ているのかは分かっているのだろう。
それで敢えて私を向かわすということは、恐らく客人は私も知っている人物だということで。
「・・・・・・」
まさか、なんて脳裏に透さんの顔を思い浮かべたが。
そんなはずはないかとドアを開けると、視線はすぐに下へ向けられた。
「おはよう、如月さん」
「コナンくん・・・」
予想していたような、そうでなかったような。
彼が来ることに疑問はあるが、驚きはなかった。
「昨日ぶりだね」
ただ、どこか楽しそうに見える彼の仕草と声色に、言葉を詰まらせてしまった。
彼は私の姿を見て、何の疑問も持たなかった。
私がここにいることを事前に知っていたように。
「あの後・・・大丈夫だった?」
それはこっちのセリフでもあるのだけど。
何も無ければ、ここには来ない。
それは互いに言えることで。
昴さんのように余裕を含んだ笑みで返したかったが、今は、追い詰められた笑みしか返せなかった。
「・・・そうだ、如月さんも協力してくれるよね?」
「・・・?」
表情で読み取ってか、彼はパッと話題を切り替えるように手を軽く叩き音を出すと、悪戯っ子のような悪い笑顔を私に向けた。