第1章 朝日は終わりを告げた
「さっき玄関を通った時、彼女の靴が無かったので」
「えっ!?」
・・・淡々と話し過ぎだろうか。
こういう時は、大袈裟なくらいに驚いてみせた方が良いのだろうけど。
「我々が盗聴器を探す為に部屋中を調べ回ったら、この死体が見つかってしまうと恐れて逃げた・・・という場合も考えられますね」
スーツケースを開ける為に身をかがめていた安室さんも、立ち上がりながら自身の考えをそう付け足してきて。
「じゃあこの男を殺したのは、圭さんだっていうのかよ!?」
彼のその推理に、毛利探偵は焦った様子で声を荒らげた。
「それはまだ断定できませんけど・・・コナンくんの靴も無くなっていたのは気になります」
「!」
それに返事をする安室さんの言葉に、今度は私が思わず目を向けた。
・・・彼も見ていたのか。
そういえばこの部屋に入る時、彼は私の後に入ってきていた。
その時、確認していたのだろうな。
「ど、どうして・・・」
「逃げた彼女を追ったか、あるいは連れ去られたか・・・といった所でしょうか」
不安そうな蘭さんに追い打ちをかけるような言葉だとは分かっていたが、なるべく落ち着いてそう返した。
恐らく自分からついて行きましたよ、とも言えなくて。
でもこう言えば、正義感の強い彼女なら、きっと。
「わ、私コナンくんに電話してみる!」
コナンくんを探すだろう。
「俺も今、圭さんにメールを打ったが・・・逃げたんなら返事は来ねえな」
携帯を見ながら毛利探偵はそう言ったが、返事が来る可能性はゼロではない。
「ん・・・?け、圭さんから!?」
そう考えていると、早速彼女から返信があったようで。
皆でメールが届いた携帯を覗き込むと、毛利さんがその文面を読み上げ始めた。
『メールが来たということは、死体を見つけたんですね?このボウヤは夜が明けたら解放するつもりですが、警察に通報し私の逃亡を邪魔するおつもりなら、ボウヤの身の安全は保証しかねます・・・』
・・・夜が明けたら、か。
警察への要求が無いということは、他にやり残した事でもあるのだろうか。
そうだとすれば彼女は・・・。