第9章 愛はお金で買えますか
・・・家もそうだが、広い庭だ。
時々、蘭さんが家の掃除に来ていると言っていたが、この広さは手を焼くだろうな。
次は私も手伝いに来よう、と勝手に決心して、キッチンへと向かった。
キッチン近くの廊下を歩いていると、微かに美味しそうな匂いが香ってきて。
覗き込むように顔を出すと、それに気付いた昴さんが手招いて私を呼んだ。
「スープを作ってみたのですが、味見をして頂けませんか」
そういえば彼はよく料理をしているけど・・・趣味なのだろうか。
見慣れてしまったが、異様と言えば異様だ。
「・・・ありがとうございます」
ここにくれば、気持ちが正されるような気にもなるが、人としてだらしなくなってしまう気もする。
余りにも、甘やかされ過ぎている。
「・・・昨日は、変なこと言ってすみませんでした」
朝食が並べられ、大方食べ終えた頃。
ようやく、詰まっていた謝罪の言葉が口から出てきた。
言うことは容易かった。
けれど、言ってしまえば嫌でも昨日のことを思い出し、話題になってしまうから。
情けなくも、ここまで時間が掛かってしまった。
「お誘いは嬉しいですが、ああいう誘いは今後勘弁願いますね」
「・・・はい」
いつもとんでもない考えをして、突拍子もないことを言ってくるけど。
そういう考えは、ちゃんとしているようだ。
だからこそ、彼は信用できると改めて思った。
「それで、昨日のことは話したくなりましたか?」
「・・・・・・」
ああ、やっぱり昨日の言葉に間違いはなかったのか。
ただ、無理には聞き出さない、というのが声色と表情で伝わってくる。
最後の一口を平らげると、彼に向き直って真っ直ぐ目を見た。
「・・・聞きたいですか?」
「ええ、勿論」
バーボンの事だから、全てを把握しておきたい・・・といった所か。
元々はデートという名目だった上、コナンくんも絡んだ話だ。
しておかない訳にはいかない。