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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第8章 ハートの無いトランプ




「結果としては・・・そうなのかもしれません」

どうなれば成功なのかも、正直分からないが。
少なくとも、成功ではないだろう。

「珍しいですね。そこまで落ち込んでいるなんて」

何故か彼は真横の席へと座ると、テーブルにトレーを置いた。

綺麗に澄んだ紅茶がカップに注がれる様子を眺めつつ、私の思考は完全に停止していた。

「弱っている時が落とし時なんて言いますが」

・・・落ち込んでいる?
弱っている?

私が・・・?
そう、なのだろうか。

劣等感や失望は感じているが・・・私は落ち込んでいるのだろうか。

「確かに、そうしたくなります」

悲しい、と感じたのも確かだから、落ち込んでいるというのも間違いではないのか。

何に、なのかは分からないが。

そんなことをひたすら脳裏で考えていると、昴さんは私の顎を優しく掴み、クッと上げて視線を合わせた。

「・・・・・・」

十数分前に、透さんに似たようなことをされたけど。
やはり、違う。

昴さんには良くも悪くも、何も感じない。

・・・私は、昴さんに慣れ過ぎたんだ。

「・・・なんて、そこまで卑劣ではありませんよ」

どんな酷い顔をしていたのか分からないが、私の表情を見るなり、彼は触れていた手をパッと離し、私の前にカップを置いた。

・・・何があったかは聞かないのか。
それは、助かるけれど。

「昴、さん・・・」
「はい」

でも、それが逆に今は。

「その・・・」

苦しくも思えて。

「・・・抱いて、頂けませんか」

彼に身勝手なお願いをした。

「・・・・・・」

・・・吹っ切れたかった。
一度、何でもない感情で抱かれれば、そうできると思って。

彼の服を掴み、俯きながら懇願した。

「それは、協力者としてですか」

暫く沈黙の時間が流れた後、昴さんは服を掴んでいた私の手を優しく離し、そう尋ねた。

「それとも、個人的感情で、ですか」

・・・それは重要な事なのだろうか。
私はただ、抱いてくれれば。

「どっちでもいいです」

それだけで良かった。

優しくなくていい。
寧ろ多少乱暴にされる方が・・・なんて思う始末で。



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