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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第8章 ハートの無いトランプ




「・・・少しは伝わってますか?」

たった、指先にキスをされたくらいで。
それだけで、情けない。

これ以上を許すつもりは無かった為、昴さんとのそれも避けてきたけれど。

今更、後悔が襲ってくる。

「ひなたさん」
「や・・・っ」

顔が近付いたかと思うと、耳元で名前を囁かれて。
弱いと理解はしているが、避ける術をまだ持っていない。

・・・本来、避けるものではないから。

「・・・ッ」

そう、本来は避けるものではない。
ましてや、突き飛ばすものでもない。

「・・・ひなたさん?」

今の、私のように。

「・・・!」

無意識だったが、そうする切っ掛けはあった。

ふと、彼から香った匂い。
それが彼を突き飛ばす要因になった。

彼のものではない、女性物の香水の匂い。

この匂いは、前にも嗅いだことがある。

「す、すみませ・・・」

・・・ベルモットだ。

少し違う匂いが混じっているが、彼女がつけていた香水に、よく似ている。
もしかすると、本人かもしれない。

だとすれば、さっきまで彼はベルモットと会っていたことになる。

「顔色がよくありませんよ。どこか体調が・・・」
「大丈夫です・・・っ」

気になってしまえば、その匂いしか届かなくて。
完全に、彼を拒絶した。

彼はそこを気にする様子はなく、ただ私の様子だけを心配した。

・・・それもどうせ、女性を落とす為の言葉なのだろうけど。

「そのまま寝ていた方が」
「本当に、大丈夫ですから・・・!」

そんな彼に苛立ったのか、思わず声を荒げてしまった。

いや・・・制御できなかった自分に苛立ったのかもしれない。

「・・・っ、すみません・・・」

咄嗟に我に返ったが、遅過ぎた。
既に、間違えた行動を取ってしまった。

やはり私は彼のように、冷静に行動することなんてできないのだと、そこはかとない劣等感が押し寄せた。



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