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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第8章 ハートの無いトランプ




待てと言われたのだから、大人しく待つ他ない。
何を試されているのか知らないが、如月ひなたとして、大人しく待っていよう。

「・・・・・・」

それから更に一時間は経っただろうかという頃。
私はベッドを背に畳の部屋で腰を下ろしていた。

待つことは苦ではないが。
スコープを覗いている時と今とでは、待つことの緊張感が違う。

どうやら待ち伏せをされた様子はない。
ならやはり、カメラで監視されている最中だろうか。

であれば、このまま大人しくしているしかなくて。

「・・・・・・」

そんな暇を持て余しながら、顔は動かさず部屋を見回した。

本当に物が少ない部屋だ。
だからこそ、部屋の隅に置かれたギターが目立つ。

バーボンがギターを弾くなんて・・・聞いた事ないけど。

でもスコッチは、ライフルバッグの代わりにギターケースを使っていたな。
彼はもしかしたらギターが弾けたかもしれない。

まさか、スコッチのギター・・・なんて言わないよな、とギターへと手を伸ばして。

弦を軽く弾いて音を立ててみた。

静かだった空間に響いたせいか、体の中まで同じように震えるようで。

何故か、懐かしい気持ちになった。

「・・・!」

部屋の外の廊下から、足音が近付いてくる。
この音は、透さんのものだ。

「遅くなってすみません」
「いえ、お疲れ様です」

数秒後、部屋の鍵は開けておいた為、彼はすぐに扉を開いて申し訳なさそうに姿を見せた。

「・・・渋谷さん、どうでしたか?」

ジョディから聞けば良かったが、やはりそれでも気になって。

これくらいなら教えてくれるだろうと、おずおずと彼に尋ねてみた。

「問題ありませんでした。どうやら、情報の行き違いだったようです。意識もはっきりしていました」

それなら良かった。

そう胸を撫で下ろすと、同時に肩の力も抜けた。



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