第8章 ハートの無いトランプ
「アメリカじゃ、100点の時は『Excellent』って書き足されるけど、日本じゃ花丸だって彼女は言ってたから」
確かに、日本ではそうすることが多いと聞く。
ただ、問題なのは・・・。
「それだけか?」
「・・・っ」
ジョディの言葉に、バーボンが問い掛けたその声色が、私の背筋に冷たいものを走らせた。
・・・やっぱり、この声が苦手だ。
全身がゾワゾワと何かに蝕まれるような感覚になる。
「え?」
「それだけなのか?FBI」
聞き直すジョディに、安室さんは挑発的に問い直して。
やはりFBIと分かっているだけあって、敵意を感じるけれど・・・それは組織の人間としてどうなのだろうか。
彼なら、そこまであからさまな態度を取らないような気もするが。
「それだけって?」
「ドイツ系の君はどうだ?」
挑発的に問われたせいか、ジョディの声色にも敵意を感じる。
いや、敵意も何も、敵であることに間違いはないのだけど。
「この写真から読み取れる情報は、それだけかと聞いているんですよ」
安室さんの問いかけは、大柄の・・・キャメル捜査官と呼ばれる彼にも向けられて。
それはまるで、FBIを試しているようにも見えた。
「日本じゃ正解に丸をつけるらしいから、一番上の答案用紙は間違っていないとしか」
キャメルさんは写真を手に取ると、数秒考え込んだ後に、そう答えを出した。
・・・間違ってはいない。
間違ってはいないが、そこだけではなくて、と眉を寄せた時だった。
「ははははっ!」
「!」
突然、嬉々とした表情で、その場にいた全員が目を向けるような高笑いをバーボンがしてみせた。
それはある意味不気味にも感じ、肩を震わせ半歩体を引いてしまった。
「やはり読み取れたのは、僕達だけだったようだよ」
「僕達?」
彼の言葉に警部さんは引っ掛かりを覚えたようで、一部分を繰り返した。
それは私も同じように感じた部分だった。