第8章 ハートの無いトランプ
「・・・そろそろ戻ろう」
立ち上がり、何となくだが彼に手を伸ばしてしまった。
そんな事をしなくても良いくらい、彼はしっかりしているはずなのに。
身長のせいか、思わず手を繋ぐよう差し出してしまった。
「・・・迷子になんか、ならないよ?」
それは私も重々承知なのだけど。
何故だろう。
不服そうに膨れる彼に、思わず笑みを漏らして。
「ごめん、蘭さんとの姿を見過ぎたのかな」
蘭さんといる時は、大概手を繋いでいるように思えたからか。
彼から手を・・・離してはいけない気がしたからか。
もしくは、私が手を引いてほしかったのかもしれない。
そんな事を考えながら、彼と手は繋がないまま職員室へと戻ってきて。
「ひなたさん、丁度良かった」
「?」
透さんは私の姿を見るなり、考え込んでいた様子からパッと表情を明るくさせた。
確かに、女子高生は黄色い声をあげたくなる表情・・・なのだろうな。
私にはよく分からないが。
「被害者の渋谷さんが採点していたテストの写真が届きました。何か気付いたことはありますか?」
彼らの元へと歩み寄ると、机に置かれた1枚の写真に視線を落とした。
コナンくんの、採点済みのテストが被害者のカバンの中にあったことはおかしい、という一言から、テストを調べてみることになったまでは良いけど。
「・・・・・・」
相変わらず、面倒な聞き方をする。
どうせ彼はもう気付いているのだろう。
この小さな違和感に。
「でも、夏子が言ってた事って本当なのね」
ジョディが写真へ指を伸ばしながらそう言うと、日本の警察官達も皆、それに合わせて視線を動かした。
「ほら、右上に描いてあるイラストよ」
指が置かれたのは、数枚テストがある中に描かれた、花のマークだった。