第8章 ハートの無いトランプ
その後、辺りが赤く染まる頃まで3人の話を聞いた。
体育教師の男性と、保護者が男性一人と女性一人。
皆、被害者に会いに来たが会えた者と会えなかった者がいて。
その中の体育教師によるストーカー行為が原因で、被害者は透さんに調査を依頼していたらしい。
保護者の女性は被害者に会えたみたいだが、会えなかった男性の方は、一つ気になることを口にしていた。
ただ、どうせ言ったところでバーボンも気付いていることだ、とそれに関しては口を噤んだ。
「・・・・・・」
それよりも、私が気になるのは。
「・・・!」
コナンくんの方だ。
流石に監視対象がここにいるなら、探らない訳にはいかない。
彼にアイコンタクトでここを出るように合図すると、僅かに目を伏せて小さく頷いた。
「ごめん、僕トイレ!」
さっきまでの年不相応な表情から一変し、子どもらしい表情と声色になった彼に思わず舌を巻いた。
「すみません、私も御手洗に・・・」
ここで話をしても構わないが、その姿をバーボンに見られることに懸念があった。
深い意味はないが・・・ただただ、嫌だったから。
これだけのアイコンタクトで伝わるかは正直賭けのような所もあったが、杞憂だったようだ。
「・・・どうしたの?」
トイレに向かう廊下を進み、角を曲がった所で、彼は白々しく尋ねてきて。
「こっちの台詞だよ・・・」
思わずため息を漏らしながら本音で返事をすると、小声が届くように、彼の側へとしゃがみ込んだ。
「どうしてここにいるの?」
改めてこちらから問い直すと、コナンくんは真剣な表情のまま、私に一歩近付いた。
「ジョディ先生と一緒にいて、偶々」
・・・ジョディ先生、か。
そういえば彼女はこっちで高校で英語教師をしていたな。
確か、蘭さんの通う高校だ。
彼らはそこで知り合ったということか。