第8章 ハートの無いトランプ
「多分、階段下の路上に停めていた僕の車は木に隠れて、犯人からは見えなかったんでしょう」
そしてその犯人候補が、入口に立っているあの人達か。
「杯戸公園は出入り自由ですし、夜9時を過ぎると殆ど誰もいません。安室さんの言う通りかと・・・」
・・・その公園は、大事な思い出として記憶に残る人もいるだろうに。
不思議とそこに悪い出来事が一滴垂らされると、それに覆い隠されてしまう。
被害者だけでなく、多くの人を巻き込んでいることに、犯人は気付きはしないのだろうな。
「しかし通報した後、我々が到着した後、我々が到着するまで、何で現場で待っていなかったんだね?そうしていれば、もっと捜査がスムーズに・・・」
・・・そうか。
その場で話を聞いていれば、ここまで説明する必要はない。
彼は警察が来るより先に、現場から立ち去っていたのか。
「すみません。車の中に別のクライアントを乗せていましてね。その方が関わり合いたくないと言うもので・・・」
・・・クライアント。
どうだろうな。
恐らくだけれど、きっと助手席には組織の誰か・・・ベルモット辺りが乗っていたのではないだろうか。
あの頃もよく、話をしていたから。
「じゃあ貴方は、重体の夏子を路上に置き去りにしたってわけ!?」
ジョディは透さんの言葉に、声を荒らげて食いかかった。
それに対し僅かに目を見開いて彼女に視線を向けて。
「勿論、救急車が到着したのを確認してから立ち去りましたけど・・・それが何か?」
・・・ジョディと被害者は知り合いだったのか。
で、あればここにいる理由も納得はできる。
「・・・ジョディさん」
彼女を宥めるように、大柄の彼はジョディの名前を呼んだ。
昨日今日知り合った仲ではないようだ。
・・・それ程まで、私はFBIのチームという輪から離れていたのだなと痛感もして。