第8章 ハートの無いトランプ
「そうですね・・・助手という名目で」
名目、なんて。
どうしてそんなものが必要なのかは、後に知ることになるのだが。
今はこの状況をどうするべきか考えるので精一杯だった。
「・・・・・・」
一応、私がここに来ることを昴さんは知っている。
彼が今の状況を知ればきっと・・・。
「・・・私が行って大丈夫なんですか?」
「寧ろ、居てくれた方が心強いです」
行けと言うだろう。
一体何をされるのか、どこに連れて行かれるのか。
どうせ聞いても答えはしないのだろうから。
「・・・分かりました」
飛び込んでやろうじゃないか、と。
どこか喧嘩を買うような気持ちで、彼と共に店を後にした。
ー
「あの、私は何をすれば・・・」
車で数十分。
予想とは反した場所に連れてこられ、正直私は動揺していた。
「ひなたさんは、ただ僕の傍に居てください」
移動したのは、とある小学校の駐車場。
てっきり人気の無い場所に連れて行かれることを想像していたのに。
「・・・・・・」
人気と言う以前に、辺りに停められていたパトカーが異常さを物語っていた。
ここで何かあったことは間違いがないが、何故彼が私を連れて来たのか。
そもそも彼は何の用でここに来たのか。
予想も中途半端の中、彼は事務員に何かを話した後、校内へと入っていった。
「ああ、そうだ。ひなたさん」
「は、はい」
一歩下がって歩く彼についていく最中、徐ろに呼ばれ肩を跳ねさせながら返事をすると、彼は柔らかな笑みを向けた。
「会話を聞いて、何か気になることがあれば教えてください」
何気ないことを言われているようだけど。
何か試されているようにも感じる。
「・・・分かりました」
ただ、こういう時は安易に言葉に出さない方が良いだろう。
小さな綻びも彼は見逃しはせず、確実に捕まえて引きずり出されるのだから。