第1章 朝日は終わりを告げた
「蘭さ・・・」
電話が途切れているとすると、盗聴の可能性が高い。
だったらとりあえず電話を切った方が良いと判断した。
・・・が、そう思ったのは私だけでは無かったようで。
「え?」
私が蘭さんの名前を呼ぶより先に、安室さんは彼女の携帯に手をやり、電話を一方的に切ってしまった。
「もしかしたらこの部屋、盗聴されているかも・・・」
「えっ!?」
静かに、と人差し指を口元に当てながら声を潜めて電話を切った理由を説明すると、どこからともなく発見機を取り出してきて。
「今から全室を回って盗聴器の設置場所を突き止めますけど、構いませんよね?」
「じゃあ、5分待ってください!下着とか片付けますので・・・」
・・・ここまでバーボンに怪しい動きは無い。
敢えて1つ言うのなら、何故発見機を持っていたのか、だ。
「・・・・・・」
5分、と言って樫塚さんは部屋を出たけれど。
この状況になれば戻ってくることは無いだろうな。
コナンくんは部屋を引っ掻き回している頃だろうけど、どう出るか。
とりあえず今は安室さんに目を向けているか、と黙って数分過ぎた頃。
「・・・!」
微かだが、玄関の閉まる音がした。
その前にコナンくんと樫塚さんの声も。
会話の内容は聞こえなかったけど・・・どうやら彼は樫塚さんについて行ったようだ。
それに気付いたのは、今の所私だけのようだが。
「・・・・・・」
どうしよう。
バーボンをこのまま見張るべきか。
コナンくんを追うべきか。
・・・ここは。
コナンくんを追うべきだ。
バーボンがこの状況で何かを仕掛ける可能性は低いが、コナンくんが危険な事に巻き込まれる可能性は高い。
優先順位が決まった所で、私も適当に理由を付けて部屋を後にしようとした瞬間。
「!」
ポケットにしまっていたスマホが、震え始めた。