• テキストサイズ

【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第8章 ハートの無いトランプ




「どこかいきたい所はありますか?」
「いえ・・・特には・・・」

そもそと、彼とデートに行くことも躊躇っているのに。

そう思う感情は、ひた隠しにして一応考える素振りだけは見せた。

「では、僕が連れて行きたい場所に」

その言葉を合図に、行先は告げられぬまま彼の車で出発した。

彼とこうして、まともに会話するのは久しぶりだけど。
あまりそうは思わなくて。

ここ数日何も無かったせいだろうか。

そんなことを思いながら、彼と他愛の無い会話を続けていると、とある駐車場で車は止められた。

「ここから少しだけ歩きます」

車から素早く降りると、私の乗る助手席側のドアを開いてくれた。
頭を打たないように、丁寧に手を添えられながら。

そんなに優しく扱われる存在ではないのに、と自分を卑下しながら降りると、彼は大通りを並んで歩き始めた。

「ひなたさん」
「はい」

いつもの柔らかな雰囲気で名前を呼ばれると、隣にいる彼に何気なく視線を向け返事をした。

「手を繋いでも、良いですか?」
「!」

瞬間、目が合って。
吸い込まれそうな瞳に捕らわれた。

何を確認されたのか頭が回らない程に、その姿は何故か綺麗だと思ってしまって。

「・・・嫌でした?」
「あ、いえ・・・っ」

動きを止めてしまった。
言葉どころか、足までも。

自分でも理解できない行動に戸惑いつつ、咄嗟に否定をした。

けど。

「では」
「・・・っ」

それが彼にとって承諾の意味になる判断までには、至ってなくて。

差し出された手で、ようやく何をするのか理解した。

・・・迷う必要は無い。
そうするべきなのに。

体の内側から震えてくるような感覚に、思わず笑顔で蓋をしている顔が強ばりそうになった。

「・・・・・・」

おずおずと、あまりにもゆっくりと。
差し出されたその手に手を乗せると、キュッと握られた。




/ 368ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp