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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第7章 偶然は必然を嫌ってる




「都合の良い耳ですね」

・・・髪の毛や服に、匂いがついてしまっただろうから、と風呂場に向かう為に立ち上がって。

何となく、自分でも今日はここに泊まることになるだろうと思っていた部分もあって。

「あの部屋に・・・いたくないだけです」

すぐ側にバーボンがいる。
その気配だけで、眠りにつけない。

警戒心があるという証拠なのかもしれないが、その相手を目の前に気絶に近い眠りをしてしまっては意味が無い。

今日くらいは・・・しっかり睡眠を取るべきだと思ったから。

「それでも僕を選んで頂けたことが嬉しいですよ」

別に昴さんを選んだ訳ではないが、結果そういう事にもなるのか、と敢えて反論はしなかったが。

「・・・本当に都合が良いように変換するんですね」

その精神は見習いたい。
それ程図々しく、図太く、ポジティブに考えられれば、少しは楽になれるだろうか。

「お褒めいただき光栄です」

いつもならため息が零れ落ちるのだろうけど。
不思議と今日は、さっきのような小さな笑みが溢れた。

嘲笑うとも取れるようなそれを見た彼は、どことなく満足そうで。

・・・やはりここに来て良かったと、不覚にも思ってしまった。



「!」

その日の夜だった。
珍しく、赤井さんから連絡が来ていたのは。

私がした報告を受け、今後のFBIの動きを知らせるものだったが、勿論私はその中に組み込まれてはいない。

その場にいた人物・・・それも、バーボンに会ってしまったから。

「・・・・・・」

赤井さんにも伝えはしたが、この失態をどう思っただろうか。
聞きたいような、そうでないような。

会いたいけれど・・・合わせる顔なんてない。

ベッドに倒れ込むと、天井を見つめて。
何とも言えない苦しさが、思い返す度に増して胸を締め付けた。

そのせいか、無責任に溢れ出てきそうなものが出てこないように腕で瞼の上から蓋をして。

その日はそのまま、いつの間にか眠りについていた。



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