• テキストサイズ

【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第7章 偶然は必然を嫌ってる




納得なんて、する必要もないのに。

いや、そもそも私はさっきから何を考えて・・・。

「失礼します」
「っ・・・」

・・・そんな無駄な考えをしている中で、私の体は彼の腕の中にすっぽりと収まり、同時に思考は完全に停止した。

しっかりとした体を言葉通り肌で感じていると、彼の片手が私の後頭部へと沿わされて。

少しだけ、強く。
苦しく無い程度に、抱き締められた。

「・・・・・・」

温かい。
人の体温というものに、無条件に体が安心感を覚える。

・・・倉庫での彼の手袋越しの体温も、どことなくそうだった気もする。

遠い昔のあの日・・・赤井さんに抱き締められた時も、同じように体温で酷く安心した。

そのせいか、眠気に似た感情が体を包むと、ゆっくりと力が抜けていって。

体が自然と、温もりを敏感に感じ取るように。
私の瞼は段々と重みを増していって。

「・・・っ!」

・・・瞼が閉じた瞬間だった。

行動と反して、目が覚めたのは。

「ひなたさん・・・?」

違う。

私は何をしているのか。

警戒心を働かせるどころか、安心感を覚えるなんて。

我に返ったその瞬間、考えるより先に彼を突き放すように勢いよく腕を伸ばしていた。

「・・・!」

その時に見えた彼の表情は落ち着いた様子ではあったが、目は見開き驚いたものをしていて。

・・・そうだ。
今の行動は、如月ひなたとしては間違っていた。

「す、すみませ・・・ッ」

咄嗟に謝りながら、思わず視線を落とした。
距離を縮めるものとしては、最適だったのに。

自らそれを、棒に振った。

「こちらこそすみません。少し度を過ぎていましたね」

呆気なく離れた体は、一瞬で冷えていくようで。
それは冷や汗のせいなのか、それとも。

「わ、私そろそろ帰ります・・・準備もあるので」

声が・・・震える。

失敗をしたという事実からもあるが、何より自分自身を保てなかったことへの恐怖が・・・大きかった。




/ 368ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp