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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第7章 偶然は必然を嫌ってる




「・・・透、さん」
「はい」

きっと気の所為だと思うが。
そう考えを押し潰し、どうにか彼の名前を口にした。

満足そうに笑う彼を見て、杞憂かとも思ったが。

どこか切なそうな表情に見えるのは、やはり私の気の所為だろうか。

「ひなたさん。一つ、聞いてもいいですか?」

羞恥とハッキリしない感情からか、自然と落ちていた視線を、彼の問いかけにパッと上げて。

「何ですか・・・?」

私は一つどころではないけど、と心の中で付け足しながら首を傾げた。

もう今更何を聞かれても良い。
自暴自棄にも似た思いは、心を僅かに凍らせた。

「想いを寄せていた方は、その後どうなったのでしょう?」
「・・・・・・」

・・・心だけでなく、体まで冷えるようだ。
何を聞かれるのかと思えば、そんな事か。

以前、彼にこの手の質問をされた時、相手像は赤井さんを思い浮かべていた。

勿論、想像相手がいた方が現実味を帯びると思っただけで、深い意味は無い。

・・・断じて。

「それ・・・聞きたいですか?」

普通はこういう時に尋ねるものなのだろうか。

「片思いですから」

相手の事を吹っ切れている確認なのか?
・・・でもそれは、バーボンが私にする必要があるのだろうか。

意図も、意味も、理解できない。

ただ、こういう時は。

「安室さ・・・透さんとのことがあってからは、ちゃんと忘れようとしてますよ」

そう言っておくのがベストなのではないかと思った。

一応こちらも、それらしい態度は取っておかなければならないから。

「・・・そうですか」

けれど彼は、私の返答にどこか不服そうというのか、納得した様子ではなくて。

間違ったか?と戸惑いつつ彼に視線を向け直すと。

「でもまだ、忘れきっていないんですね」
「・・・・・・」

何故か余裕そうな声色で、そう返された。




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