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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第7章 偶然は必然を嫌ってる




「ひなたさん」
「・・・は、い」

・・・マズイ。
そう思った時には、既に遅かった。

「大丈夫ですか?お疲れのようですけど」

強烈な眠気が襲いかかり、体の力が抜け始めた。

・・・カップに何か仕込んだ様子も、ハーブティーに仕組まれた様子もなかった。
彼も同じ物を同じように口にしていた。

なのに、何故・・・。

「大丈・・・」

このままここにいては危険だ。
まずは自室に戻ろうと、立ち上がりかけた時、力の入らない体は崩れ落ちようとしていて。

咄嗟に受け止めた安室さんが支えてくれたが、最早自分で立つことは難しくなっていた。

「・・・大丈夫には見えませんね」

・・・彼はすごいな。
敵ながらそう思う。

普通、目の前で獲物が弱っていたら、思わず笑みが零れ落ちそうなものだが。

そんなにも、心配そうな表情ができるのだから。

「ベッドに運びますよ」

彼は一言断りを入れると、私の体を横抱きで持ち上げて。

「・・・・・・」

宣言通りベッドの上に降ろされると、更に眠気は強いものになっていった。

「・・・ひなたさん」

安室さんの優しい声で名前を呼ばれて。
頬には、彼の手が添えられた。

・・・温かい。
その温もりに引き寄せられるように、自然と猫のように顔が擦り寄った。

「・・・あまり煽られると、理性が保てなくなります」

その時既に、意識は殆ど無かったのだと思う。
彼の顔が近付いたことで、そこに彼がいるのだと再認識した程で。

「・・・安室さん?」

確認するように名前を呼べば、何故か不服そうな表情を浮かべた。

かと思うと、もう一方の手も頬に添えられて。

「・・・できれば僕のことも、下の名前で呼んで頂けませんか」

更に顔を近付けられると、鼻先が触れてしまいそうな位置で、そう要求された。

名前・・・彼の、名前。

「と・・・る、さん・・・」
「はい」

意識も声も切れ切れになりながら口にすると、彼はどこか切なく聞こえる声で、返事をした。

「透、さん・・・」
「・・・はい」

どうしてそんな声をするのかと、もう一度呼んでみたが。
更に切なさは増すだけで。

ただ、どこか温かく、優しいその声は。

「・・・おやすみなさい」

ゆっくりと、私の中に染み込んでいくようだった。




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