第7章 偶然は必然を嫌ってる
「信じますよ。貴女の言葉ですから」
「・・・・・・」
彼のその言葉に、思わず目を見開いた。
彼の声色、表情から、嘘を言っているようには見えない。
・・・いや、そう見せかけているだけなのに。
何故こうも・・・罪悪感があるのだろうか。
「逆に、ひなたさんは僕について尋ねないんですね」
「!」
確かに、そうだ。
普通はこちらが動揺する側でなく、見られたくなかったであろう彼が動揺する側のはずで。
最初からそうしておけば良かったのに。
後の祭りとは、こういうことを言うのか。
「た、探偵のお仕事かと思ったので・・・聞いてはダメかと」
苦し紛れに出た言葉は、そんなことで。
「まあ、あながち間違いではありません」
それに対し彼は、否定も肯定もしない言葉で軽く交わしてみせた。
ああ・・・もう、本当に。
この関係が、酷く息苦しい。
苦しくて、苦しくて・・・仕方がない。
ー
あれから彼の車でアパートまで送り届けられ、助手席の扉を彼に開けられると、ゆっくりとそこから体を下ろした。
自然と私が頭を当てないよう、ルーフ側の枠に手を添えていることに女性への慣れを感じては、心の中でため息を吐いた。
「ありがとうございました」
未だ、彼の目は見られないままだ。
見てしまうと、吸い込まれてしまいそうな気がして。
「いえ。あの辺りは物騒なので、あまり近づかない方が良いですよ」
「そうします」
・・・早く部屋に戻ろう。
赤井さんに報告すべきことも増えたことだ。
こんな失態続きな上、独断で動いていることが耳に入ったら・・・どう思われるだろうか。
役に立つどころか、足を引っ張ってばかりの自分に嫌気がさしながら、肩にかけていた上着を彼に返した。
「・・・ひなたさん」
それを受け取ると、彼は徐ろに私の手を握りながら名前を呼び、その手の力を僅かに強めた。
バーボン・・・というよりは、安室透の雰囲気だ。
それくらいには、柔らかな空気を纏っていた。