第1章 朝日は終わりを告げた
「その人・・・ひなたさんが、そう呼ばれてたんだ」
流石に、内心では動揺した。
状況的には良くないから。
一体彼は何者で、どこまで首を突っ込んでいるのか。
「・・・お酒のあだ名?」
「ううん、きっとコードネームだよ」
そこまで分かっていて遠回しに聞いてきたなんて。
本当に悪い子だ。
「僕が追ってる組織のね」
・・・追ってる、か。
何故彼があの組織を追っているのかは分からないが、それとこれとはまた別問題で。
「・・・組織?」
私がかつてのウェルシュだったことに確信があったとしても、私からバラすことはできない。
だから今はとぼけるしかできなくて。
「ひなたさん」
赤信号で車が止まった時、彼が改まったように名前を口にして。
「正直に答えて」
真剣な、子どもの声とは思えない低い声でそう言われると、思わず横目で彼に視線を向けた。
「ひなたさんは、僕の敵?」
メガネの奥で光る瞳は、曇りが無く眩しいくらいに真っ直ぐとしたもので。
これが真実だけを求める、探偵の目か。
「コナンくんが敵だと思うなら、そうじゃないかな」
今の私にとっては、どちらに思われていても構わない。
寧ろ敵だと思われていた方が、都合が良いかもしれない。
実際どちらでもない。
そう思いながら笑顔で答えると、彼は少し不服そうな表情を見せて。
その後、暫く彼は無言のまま何かを考えているようだった。
それに声を掛けることはあえてせず、時々チラリと視線だけを向けてみたが、口元に手を当て考え込む様子しか確認はできなかった。
「着いたみたいだね」
指定された場所付近で、安室さんの車を見つけると、近くの駐車場へと車を停めて。
彼らとそこで合流すると、念の為という安室さんの言葉で、みんなで部屋まで樫塚さんを送ることとなった。