第1章 朝日は終わりを告げた
「そっかあ」
わざとらしいくらいに残念そうに呟く彼を横目に車を出発させると、事前に聞いていた場所へと向かい始めて。
「ひなたさんってさ、いつまでアメリカに住んでたの?」
「いつまでと言うか・・・少しの間だけだよ」
これは嘘のような本当のような。
ここまで聞いてくるということは、彼なりに私の事も調べているのだろうな。
「どうしてそこまで気になるの?」
一応、それとなくはしていたつもりだけれど。
バーボンにも指摘された通り、冷静過ぎたのかもしれない。
でも私にはそこまで、そつ無くこなす演技力が残念ながら無くて。
「・・・あのさ」
声のトーンが変わった。
さっきまでの子どもらしさが・・・少し抜けている。
これは確信的な事を言われる。
そう直感的に思った。
「僕、ひなたさんに似た人をアメリカで見たことがあるって言ったよね?・・・というよりあれは、ひなたさんだったと思うんだよね」
ほら、やっぱり。
「どうしてそれが私だと思うの?」
でも確信材料が無ければ、意味が無い。
「それはひなたさんが本当の事を教えてくれたら話すよ」
・・・ブラフだろうか。
だとしたら今は、私も曖昧に答える他ないけれど。
「実はその時、銀色で長髪の男と一緒に居たのを見たんだ」
「・・・・・・」
曖昧に、答えられるものであれば。
「・・・僕が言いたい事、分かるよね?」
これは、確信づいているのだろうか。
仮にそうなら、彼は相当性格が悪い。
確かにアメリカで、そういう人間と会ったことはあるけれど。
「そういう知り合いはいないから、多分それは私じゃ・・・」
どっちみち、彼に正体を知られる訳にはいかないから。
誤魔化してはみせたけど。
「ウェルシュ」
「!」
彼は更に確信に近い言葉を口にした。