第7章 偶然は必然を嫌ってる
まさか・・・組織もこの取引に関わっているのだろうか。
だとすれば、相当大きな話になってくる。
ここに私1人ということも・・・酷く危険な話だ。
「これ、欲しがっていた情報です」
「ああ」
バーボンが小さな紙切れを例の男に手渡しているのを確認すると、更に焦りが募った。
・・・これは早めに赤井さんの耳に入れておいた方が良い。
そう思い、取り急ぎ彼に一連の流れをメールで送った。
「それでは、僕はこれで」
組織でも探り屋として動いていた彼だ。
ここにも、その類で来ているのかもしれない。
「もう行くのか」
「ええ」
このままバーボンを尾けるべきだろうか。
・・・いや、リスクが高いか。
今回はFBIの仕事だが、バーボンに関しては赤井さんの指示を半ば背いて独断で動いている部分もある。
これ以上は流石に危険だ。
これは・・・私が関わってはいけないのかもしれない。
でも、私以上に誰も関わらせてはいけない気もする。
「会いたい人が、いますので」
複雑な感情の中、バーボンは去り際にそんな事を言って。
・・・会いたい人?
会う約束をしている、ではなく?
「・・・!」
僅かな引っ掛かりを覚えながら、彼が立ち去ろうとする姿を確認していると、どこからか現れた黒猫が、私の目の前にストンッと下りてきて。
瞬時に、その状況に背筋が凍った。
アメリカであれば、そこまで焦りを覚える状況ではないが。
「ッ・・・!!」
黒猫は、私の焦りを知ってか知らずか、不安定な足場をどんどんと登っていき、あろう事か空のアルミ容器を地面に落として行った。
「・・・何だ?」
ただでさえ音が響きやすいのに。
見られたくない事をしている時に、こんな不自然な場所から音が聞こえて来たら。
「俺、見てきます」
・・・誰かが来ることは、ほぼ間違いがない。