第7章 偶然は必然を嫌ってる
今日、ここに現れるとは限らない。
そもそも、情報が正しいとも限らない。
それを確かめるのが、今回の仕事だ。
忍耐は赤井さんに鍛え上げられている。
スナイパーとして獲物を待ち続けるそれに比べれば、息を潜めておくくらい、どうってことは無い。
そんな事を思いながら、倉庫の隙間から見える空を見上げて。
アメリカから見る空と、少し違うようにも同じようにも見える夜空に、月だけが見える。
今日は満月だ。
張り込みや尾行には向いていないが、そんなことも言っていられない。
視線を空から出入口へと移し、数時間が経った頃だった。
「・・・!」
今日はもう姿を現さないかもしれない。
それでもあと少し、と粘っていると、倉庫の重たい扉が軋んだ音を立てながら、ゆっくりと開いた。
ガヤガヤと話し声を響かせながら入ってきたのは、男が数人。
5人・・・いや、6人。
その中に、運良くあの男もいた。
本当に運が良い。
張り込んでその日に、出入りが確認できたのだから。
ドラッグのやり取りも確認ができた。
その上、隣にいるのは海外マフィアの人間だ。
ここに繋がりがあるということは、かなり巨大な取引になっているかもしれない。
今、直接やり取りしているそれは、次に横行させる薬だろうか。
それが入手できれば一番だが・・・出入りを確認できただけで収穫だ。
今日はこのまま退散しようと、彼らが居なくなるのを引き続き息を潜めていた時。
「こんばんは」
「・・・!?」
7人目の男が・・・現れて。
緊張感は保ったままだったが、更に体が強ばる程の緊張が全身を包んだ。
「・・・・・・」
・・・バーボン。
「お前か」
FBIが追っていた男が彼にそう呟くように言ったということは、彼らは顔見知りということか。