第7章 偶然は必然を嫌ってる
「・・・・・・」
尾行を巻けたことに安堵はできない。
尾行相手が誰か分からないからだ。
気配があった上、殺意は感じられなかった。
少なくとも、組織の人間ではないようだけど。
・・・それ以外に、誰が私を尾ける必要があるのだろうか。
ー
次の日。
私は工藤邸にいた。
あの後バーで何とかFBIの仲間と落ち合うと、暗号の書かれているメモ用紙を受け取り、中身を目に焼き付けてすぐに燃やした。
久しぶりの、任務についてだった。
そこには、とある場所で行われているドラッグのやり取りについて書かれていて。
その場には、FBIが以前から追っていた人物が顔を出しているという情報が入っているらしいが、日本では人手も薄く、私もその情報収集に駆り出された・・・といった所だった。
色んな国で、色んな国の人間が日々犯罪行為に手を染めているが・・・比較的平和な日本でも、そういう事が日々起こっている。
それを知らない人も多いだろうが、知らない方が良い事も沢山ある。
知られない内に消してしまうのも、私達の仕事だ。
「お待たせしました」
その仕事へ向かう前に、私は預かっている物を受け取る為、工藤邸に来ていた。
いつまでもそのままにしていては、こちらも気持ちが落ち着かない。
そう急かし、会いたくはないがここへ出向いた。
預かり物は恐らく、赤井さんからの物だろうから。
「・・・・・・」
ソファーに座って待っていろという指示を受け、大人しくそこに座った数分後、昴さんは小さなアタッシュケースを持ってきて。
「どうぞ」
それを目の前のテーブルに置くと、私へ小さく押し出した。
アタッシュケースというだけで酷く威圧的に感じるそれに手を伸ばすと、ケースの留め具を外して。
「・・・!」
ゆっくりとそれを開いていくと、その中には小さな拳銃が収められていた。
「彼が、貴方にと」
「・・・・・・」
それは、最初から分かってはいたが。
まさか中身が拳銃だとは、思ってもいなかった。