第7章 偶然は必然を嫌ってる
帰るまでに何度ため息を吐いただろうか。
取り込むよりも吐いた空気の方が多いのでは、と感じる程で。
結局、またいつものセーフハウスに戻ってきてしまった。
帰る場所はここしかないのだから、当然なのだけど。
まだ、彼は隣にいるだろうか。
できればそこに姿があってほしくはない。
そう願いながらいつものように、一番下に配置されている自身の部屋番号の書かれたポストを開けると、その中の天井をそっと一撫でした。
「・・・!」
そこには、私達が秘密裏に使う合図がある。
小さな磁石を、付けておくというそれが。
その磁石の、位置と個数と僅かな大きさの違いで、大方の時間と落ち合う場所が示されている。
一番下にあるこのポストは、しゃがんで覗き込まない限り、磁石の存在には気付きにくい。
仮に気付いたとしても、これだけでは解読できるはずもないだろう。
「・・・・・・」
今日のそれは、20時にとあるバーでの待ち合わせを示すものだった。
まだ定期連絡には早いと思うが・・・何か急ぎの用だろうか。
そんな事をぼんやり考えながら、隣を気にしつつ何とか隣人には見つからないまま部屋へともどった。
そもそも私は、特別に赤井さんから直接任務を貰っている。
その為、FBIから任務を貰うことは少なかった。
・・・というより、日本に来てからはほぼ皆無と言っていい。
彼が生きていると知っている人物は、FBIの中では私と上司であるジェイムズ・ブラックだけだ。
そこに私が入っているのは・・・本当に偶然で。
寧ろ彼の偽装死に気付かないままだったら・・・私はどうなっていただろうか。
考えるだけで、恐ろしい。
それから私は、表立って動けない赤井さんの代わりに、色々と動くようになった。
FBIの仲間には、特別な任務についているとジェイムズさんから説明してもらって。
怪しまれるからと、仲間との接触も最小限だった。
・・・それでも、コナンくんにはバレていたようだが。
その、コナンくんの監視のみをしている時期は、時折悲観的になったものだ。
・・・何故、最前に立てないのか、と。