第7章 偶然は必然を嫌ってる
「安室さんの・・・部屋ですか?」
「ええ。いかがでしょう」
ここは完全なる相手のテリトリー。
対策なんてことも、ほぼできないに等しい。
した所で、墓穴になることだって有り得る。
今日、今この瞬間ですら、何が起きるか分からないのに。
「・・・・・・」
・・・バーボンを敵に回すことがどれだけ恐ろしいことかは、組織にいた頃に嫌という程分かったつもりだ。
「・・・分かりました、良いですよ」
理解は・・・しているつもりだ。
ただ理解した所で、考えが変わる訳でも私の立ち回りが変わるわけでもない。
心の奥底に存在する、あの人への罪悪感を踏み付けて、彼の誘いに笑顔で返事をした。
ー
「・・・それで、デートの約束をしてきたんですか」
「いけませんか?」
元々、そういう誘いをされそうだとは予想していた。
それは、安室さんの部屋で起きたことを今報告している、昴さんも分かっていたことだろう。
「いえ?ただ、僕とのデートもしてほしいと思っているだけです」
もういい加減、こういった言葉にも慣れが出始めて。
彼もバーボンも、女性を手懐けることに自信があるというのは十分に分かった。
「・・・良いですよ」
だったら私は、それらしく。
「ただし、バーボンの件が片付いたら・・・ですけど」
手懐けられてやる。
・・・勿論タダで、とはいかないが。
「ほぉー・・・それはそれは」
私の返事を聞いた彼は、安室さん同様、楽しそうに何かを含んだような笑みを浮かべて。
「俄然やる気が出ますね」
言葉通り、意気込んだようなものを感じる圧を僅かに感じ取らせた。
「でも、本当によろしかったのですか」
「?」
彼の入れた紅茶に口を付けていると、ふと尋ねられて。
何の事かと視線だけを向けると、昴さんはソファーに身を預け、足を組み直した。