第7章 偶然は必然を嫌ってる
「お付き合い・・・というよりは、その一歩手前の関係から始めませんか」
これを、私の答えとした。
「・・・ほぅ?」
肘を立てながら手を組み、どこか楽しんでいるような笑みを私に向けながら、彼は小首を傾げた。
それを真っ直ぐ見つめると、再びゆっくりと口を開いて。
「1ヶ月・・・」
これは私への期間でもあり。
「1ヶ月経って、私の気持ちが少しも傾かなければ・・・本当に諦めてください」
彼への期間でもある。
もう、準備などではない。
この瞬間から・・・始まっている。
「・・・分かりました」
彼の目的を探り出すことも。
「受けてたちます」
引きずり出す、作戦も。
「・・・・・・」
・・・信念のような、そんなものを感じるこの目。
組織にいる頃にも何度か向けられたその目を、今、また向けられている。
まるでこちらの方が宣戦布告をされているようで。
思わず、それ以上の言葉を飲み込んでしまった。
「では、早速ですけど。デートの約束をしませんか」
「・・・デート、ですか」
まあ、1ヶ月という期間を提示した以上、彼も手段を選ぶわけにもいかないだろう。
何をされても、彼に気持ちが傾くことはないが。
「お付き合いの一歩手前なのですよね?デートくらいは許されませんか?」
・・・何を思っての誘いなのだろうか。
「構いませんよ」
お互い笑顔のはずなのに、空気だけは和やかでは無くて。
彼だって私の空気感を察していないはずがないのに、何故正体を明かして近付いて来ないのだろうか。
いつまでこの・・・気持ち悪い関係を、続けなくてはいけないのだろうか。
「どこに行くんですか?」
彼相手に尾行はできない。
どこへ行くにも結局、私1人だ。
けれど、行く先を事前に知ることができれば、何か対策ができるのだが。
「どこにも行きません」
・・・どうやら1番、望ましくない答えが。
「ここで、デートをしましょう」
返ってきてしまったようだ。